病気を予防し、ストレスも解消!
医師がすすめる健康習慣
『いいことづくめ』のウォーキング
今回のテーマは「ウォーキング」です。
ウォーキングには、医師の私も驚くような、いろいろな健康へのプラスの影響が考えられます。
おすすめのウォーキング方法、続けるためのちょっとしたコツなどをご紹介したいと思います。

- まず最初に、ウォーキングにはどのようなメリットがあるのか、教えてください。
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2023年に、「1日1万歩を続けなさい 医者が教える医学的に正しいウォーキング」という本を出版しました。実は、最初にその本の執筆のお話をいただいたとき、ウォーキングが体にいいなんて当たり前だから、そんなに書く内容がないとお断りしようかと思っていたんです。しかし、ちょうど連休中だった上、コロナ禍の時期で外にも出られなかったため、せっかくだからとウォーキングに関する論文をいろいろと調べてみました。すると、医師である私も驚くような素晴らしいメリットが、ウォーキングにはたくさんあることがわかりました。
まず、ウォーキングは「メタボ」の解消に効果的です。メタボリックシンドロームとは、厚生労働省によると「内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることにより、心臓病や脳卒中などになりやすい病態」のこと。有酸素運動であるウォーキングは、肥満の解消や高血圧の改善、血中の中性脂肪を分解する酵素を活性化させることによる脂質異常症の改善などが期待できます。
高血圧が続くと動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞などの病気になるリスクを高めます。また、肥満は高血圧や糖尿病、脂質異常症などの病気になりやすく、睡眠時無呼吸症候群の原因の一つとしても知られています。
- ウォーキングによって、いろいろな病気のリスクを軽減することが期待できるんですね。
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それだけではありません。軽い運動は、体温を上げて血行を促進し、さらにストレスも解消するため、免疫力を高める効果があります。しかし、運動習慣がない人が急に激しい運動をすると、身体がストレスを感じ、逆効果となってしまいます。
その点でも、一般の方が無理なく続けることができるウォーキングは、おすすめの運動だと思います。
他にも、ウォーキングと健康に関する研究にはさまざまなものがあります。睡眠の質を改善したり、認知症を予防したりする効果がある、という報告もあります。また、国立がん研究センターの研究でも、「身体活動量が多い人ほど、何らかのがんになるリスクが低下する」と報告されていて、厚生労働省では18歳から64歳の人の身体活動について、「歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行うこと」、それに加え、「息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分行うこと」を推奨しています。
健康のためにできる手軽な運動として、ぜひ、日常にウォーキングを取り入れてほしいと思います。
- ウォーキングを始めるにあたって、スピードや心拍数など、守るべきやり方はあるのでしょうか。
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ウォーキングの目的によって、いろいろな推奨方法が言われていますが、最初からあまり細かいことを気にすると続かなくなってしまいます。1日約1万歩の歩行を続けた場合、スピードがゆっくりでも早くても一定の効果がある、という研究結果もあります。私個人としては、「座りっぱなしの時間を短くしよう」くらいの気楽な気持ちで、まずは始めることが大切だと思っています。
- とはいえ、「1日1万歩はなかなか……」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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歩くペースにもよりますが、一度に1万歩を歩こうと思うと、だいたい90分くらいの時間が必要です。それだけのまとまった時間を毎日確保できる人はなかなかいないと思うので、1日のうちで何回かに分けて歩くのがおすすめです。
私の場合は、朝駅前までコーヒーを買いに行って、それからお昼も外にいて歩くようにしています。診療が終わったあとは、例えばクリニックの近くにあるデパートまで歩き、スタッフや妻にお土産として甘いものを買いに行くこともありますね。それから休みの日に妻に散歩しようと誘って歩いたり、犬の散歩をしたり。何時から何時までこのコース、ときっちりと決める必要はありません。朝、昼、夜、と小分けにして、トータルで1万歩を目指すようにすれば、達成しやすいのではないでしょうか。それから、どうしても平日は難しい、という方は、例えば平日8000歩にして、週末に余分に歩く、という形でもよいと思います。
初心者はあまりハードルを上げすぎず、ご自身で始めやすいやり方を設定するのがコツですね。
- 持病がある方など、ウォーキングに注意が必要な方はいますか?
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例えばCOPDなど呼吸器系の病気がある方は、症状にもよりますが、息が切れるような運動は難しいと思います。また、ほかにも注意が必要なケースが考えられるので、持病がある方は主治医に相談の上、無理がない範囲で行っていただくことが必要です。
- 始めたものの、長続きしない、ついさぼってしまう……という方に向けて、継続するためのアドバイスはありますか。
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パートナーやお子さんなど、誰かと一緒に歩くと続けやすいのではないかと思います。実際に、パートナーと一緒に取り組むと運動が習慣化しやすいという海外の研究もあるほどです。私も妻と散歩したり、外食した帰りに少し遠回りをして歩いたりすることが多いのですが、夫婦のコミュニケーション促進、という点でもプラスだなと実感しています。
それから、今はウォーキングをサポートするさまざまなツールがあります。例えばスマートフォンにアプリを入れて、歩数を管理するのも有効だと思います。不思議なもので、「今日の歩数は6000歩」と数字で示されると、「残り4000歩、がんばって歩くぞ」と自然と思うようになるんです。数字を目に見える形にして目標を管理することで、達成への意欲がわくのかもしれません。
ウォーキングは、心身ともにいいことづくめの運動です。運動がそれほど得意でない方でもできる、器具などの準備も不要と、スタートしやすい身近な健康アップの方法なので、ぜひ楽しみながら、気楽に始めていただければいいのではないでしょうか。
