注意が必要な呼吸器の病気、
日常生活でのポイントを医師が解説

日本には四季があり、それぞれの季節でおいしい食べ物や美しい季節など、
みなさん楽しみにしているものがあるかと思います。
しかし、1日のうちで寒暖差が大きくなりがちな季節の変わり目は要注意の時期でもあります。
今回は、呼吸器内科の医師として、寒暖差が大きくなる時期に注意したい呼吸器の病気、
体調を崩さないために日常生活で気を付けるポイントなどをご紹介したいと思います。

秋の季節に注意したい呼吸器の病気、よくある症状としてはどのようなものが挙げられますか。

注意が必要な病気の一つが、ぜん息です。咳が続く咳ぜん息、それに加えて気管支が狭くなりゼーゼーヒューヒューといったぜん鳴や呼吸困難を伴う気管支ぜん息、いずれも気管支が敏感な方は寒暖差によって症状が悪化する懸念があります。過去の報告では、前の日と比較して3℃以上の気温が低くなったとき、それから5時間以内という短い時間で急に3℃以上の気温が下がったとき、ぜん息の発作が起きやすいとされています。

それから、最近注目されているのがいわゆる「寒暖差アレルギー」です。テレビなどで紹介されているのを目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。医学的な病名では「血管運動性鼻炎」と言いますが、7℃以上の温度差によって自律神経が乱れ、くしゃみや鼻水、鼻詰まりの症状が出るものです。寒暖差はアレルギーの原因物質ではないので正式にはアレルギーではないのですが、花粉症のような症状がでるので、寒暖差アレルギーと呼ばれているのではないかと思います。

それから、呼吸器の病気ではありませんが、気温差が激しいときには血圧も急激に変化します。いわゆるヒートショック、脳卒中や心筋梗塞にも注意が必要です。

やはり寒暖差は、呼吸器系にもすごく大きな影響があるんですね。

そうですね。私のクリニックに通っていらっしゃるぜん息など呼吸器系の病気の患者さんも、やはり寒暖差が激しい時期に体調を崩される方が多いですね。日本アレルギー学会の報告によりますと、ぜん息が悪化するきっかけの6割は天候、つまりは寒暖差や気圧の変化だということです。喘息の持病をお持ちの方は、寒暖差が激しい秋の季節、特に気を付けて過ごしていただきたいと思います。

ぜん息の方が気温差、寒暖差による悪化を防ぐために、何か日常で心掛けること、毎日の生活の中で気をつけるポイントなどはありますか。

特にぜん息疾患をお持ちの方は、「気管支をキレイにしておく」ことが大切です。ぜん息になると気管支に炎症が起こって気管支の内腔が狭くなり、咳が出ます。さらに炎症が強くなると気管支がますます狭くなり、呼吸困難になることもあります。この気管支の炎症を抑える状態を日頃から保っておくことで、大きく体調を崩すことなく季節の変わり目を乗り切るベースが整います。

現在は、炎症を抑えて発作を予防する、吸入のステロイドを使った治療が主流です。よく、症状が治まって調子がよいと、自分の判断で吸入をやめて治療を中止してしまう方がいます。しかし、ぜん息は一見症状が収まったようにみえても、何かの拍子に発作が起こることもある怖い病気です。一度ぜん息と診断された方は、医師を一緒に症状をコントロールしながら日常生活を送ることが必要です。「ステロイド」と聞くとなんだか怖いなと思う方もいるかもしれませんが、吸入ステロイドは妊婦さんでも使用できる安全なお薬です。症状によってステップを踏みながら薬の量を減らすこともありますが、必ず自己判断せずに、医師と相談しながらコントロールを続けてほしいなと思います。

睡眠や食事、運動などに関してもアドバイスはありますか。

睡眠は、できれば6時間は確保したいですね。体調を崩さないために、睡眠は大切です。睡眠時間が5時間以下の人は、7時間以上眠った人に比べて4.5倍風邪をひきやすい、という研究結果もあるほどです。夜中にお手洗いなどで目が覚めてしまった場合は、また暗い中で横になってじっと目をつぶっているだけでも大丈夫です。そこから本を読んだりスマホをいじったり、何か行動し始めてしまうと脳が休まらないので、睡眠のために6時間確保できたら、その間は、ベッドやお布団に横になって身体を休めてください。

健康のためにバランスの良い食事を取ることはもう当たり前のことと皆さん認識なさっていると思います。私のおすすめは、朝食にバナナと納豆を食べること。私も毎朝、ペースト状にしてパンに塗り、トーストにして食べています。

運動は、「軽い」運動をするというのがポイントですね。運動不足もダメですが、過度な運動は場合によって逆に免疫力を下げてしまうことがあります。ウォーキングなど、無理のない範囲で適度な運動を心がけましょう。

ちなみに、私は体調管理にはかなり気を遣っています。2009年にクリニックを開院して以来、体調不良でお休みしたことは一度もないんです。睡眠は必ず毎日6時間以上、昼寝も15分から20分間とるようにしています。食事は先ほどお伝えしたように朝食にバナナと納豆、運動はウォーキングを日課にしていて、1万歩以上歩いています。ウォーキングについては、また別の機会に詳しくご紹介できればと思います。

寒暖差の激しい季節の変わり目は、体調を崩しやすい時期です。みなさんも是非、いつも以上に体調管理に気を配り、素敵な秋をお迎えください。